長期投資について
長期投資という言葉は本来、長期を志向して投資に臨むべきである、という考えを集約したものと推測される。どのような姿勢で臨むか、という点において、これは正しい。
ただしこの言葉の対象は、投資家自身であって、投資自体ではない。その投資が長期になるかどうかは、投資先次第である。投資先が長期にわたって利益を出し続ける場合に限り、その投資は結果として長期になり得る。
これらを明確に区別し、この言葉の対象を的確に把握することで、その意を正確に実施する。取り違えは時に致命的となる。
投機ではない、というメッセージ
長期投資という言葉は頻繁に用いられ、強調される。投資は投機とは異なるもの、というメッセージを込めているからである。投資を資産運用と言い換えるのも同じ意図である。そのために、本来この言葉が何を対象としているかが不明確となった、と我々は見ている。
投機は投機であって、その期間の長短は無関係である。即ち、長期的投機はあり得る。期間の長短によって、投資と投機を区別するのは不適切であり、混乱の元となる。
投資と投機の区別
投資は企業を相手とする。投資家の取引先は投資先企業である。投資家の利益の源泉は、投資先企業の利益にある。
投機は市場を相手とする。投機家の取引先は他の投機家である。株式の売買は投機家を相手に行われる。投機家の利益の源泉は、時価の差にある。
以上のように、投資と投機は全く別のものであるから、区別が必要である。
実際
一般的に株式投資は、市場を通して企業に投資するので、投資家は投資先企業と市場を相手にせざるを得ない。正確な投資判断のため、厳密な区別をつけよ。
山師
一発当てようとするのは山師である。しばしば投機家と混同されるが意図が違う。意図の違いは判断基準の違いを意味する。山師にとっての的確な判断と、投機家にとってのそれは全く違う。
バランスシートと株価
バランスシートは、資産と負債の関係を明らかにし、その関係性の不健全具合を計るものである。バランスシートにおいて健全であるというのは、無問題を意味し、優良を保証するものではない。
株価が上がって資産が増えても、現金化しないのなら、資産と負債の関係性は改善されない。株価が下がって資産が減っても、信用取引をしていないのなら、資産と負債の関係性は悪化しない。
将来キャッシュフローの創出
株式投資は、将来キャッシュフローを創出する、優れた選択肢の一つである。
経営資源の投入
経営資源とは資金と労力のことである。労力は時間と言い換えることができる。
将来キャッシュフローを創出するには、経営資源を投入する必要がある。株式投資の最も優れる点は、資金のみの投入で済み、労力を別の将来キャッシュフロー創出に充てられる点である。これは経営資源の分散投資をも意味する。
いかにして将来キャッシュフローを創出するか
株式投資は、将来キャッシュフローを創出する選択肢の一つである。その他の選択肢には、ビジネスや副業、不動産投資、会社勤め、個人事業などがある。それぞれに投じるべき経営資源の種類と量がある。
すべては、いかにして将来キャッシュフローを創出するかという点に集約される。経営資源は有限である。持てる経営資源のすべてを使うのである。
上場企業
一般的に株式投資は、上場企業への投資を指す。
非上場企業の場合
企業には、長期にわたって稼ぎ続け、存続しなければならない義務はない。企業の義務は、株主へ利益を還元することである。
企業は清算してもよく、清算は必ずしも倒産を意味しない。短期間に大きく稼いで清算するのもまた、株主へ利益を還元する一つの方法であり、株式会社が作られた当初はそうであった。
株主への利益還元
株主への利益還元とは即ち、株主の将来キャッシュフローの創出に貢献することである。株主は、自らの将来キャッシュフローを創出するために投資する。
投資対象にふさわしい企業
上場企業は、清算を前提にしていない。必然的に、長期にわたって利益を上げ続け、存続し、株主へ利益を還元し続ける義務が、上場企業には求められる。
この義務を果たしている企業こそが、上場企業にふさわしい。投資すべきはそうした企業である。
企業調査
継続的に本業で利益を上げており、実態を伴っているか。投資家へ利益を還元しているか。最後に、妥当な利回りを確保できる買値かどうか、という順で調査する。
- 過去10年間の営業利益とその推移
- 営業キャッシュフローを見て、営業利益の流動性をチェック
- 投資家へ利益をどれくらい還元しているか
- 株価(買値)を見て、投資額あたりの利回りをチェック
投資は労働の代わりにならない
利益や投資元本は、労働の成果である。労働なくして成果はない。不労所得は、過去の労働の成果を活用した結果にすぎない。
投資戦略
投資家自身と投資家の置かれた状況に即したものでなければ、どんなに優れた投資方法であっても、その効果を発揮し得ず、どんなに利のある投資対象であっても、その果実を得ることはできない。
投資家の能力が充分でも、投資家の置かれた状況が許さなければ、これを採ってはならず、投資家の置かれた状況が充分でも、投資家の手に負えなければ、これを実施してはならない。
そこで、投資戦略を策定する際には、投資家自身と投資家の置かれた状況を把握して、その実情に即した投資対象と方法を選ぶ。実情を無視して利を追わば、投資家が破滅する。
それぞれの投資方法と投資対象に必要な、経営資源の種類と量は異なる。必要な種類と量を投入しなければ、基本的に成果は得がたい。これらを見積もり、実情と照らし合わせる。