節税に関する覚書

節税は支出管理の一つであり、その目的は納税額の削減ではない。

廃文書 | As of 2020.9.8

節税は支出管理の一つ

税金は、数ある支出項目の一つである。利益に基づいて額が決定するために、これを特別視する傾向がある。それが節税を誤らせ、最終的に資金管理を悪化させる。

節税は支出管理の一つである。支出管理は資金管理の一部である。すべての支出を管理し、不要な支出を抑制することで、手元資金を増やすのが支出管理である。納税額を減らせても、トータルの支出額が増えれば、趣旨に沿わない。

節税以外の正当な理由

倒産防止共済、小規模企業共済、確定拠出年金、各種保険、意図的な売却損による損出しなど、さまざまな節税がある。これらは、節税以外の正当な理由がある場合には活用し、そうでない場合は活用しない。節税のための節税に陥らないためである。

金銭感覚

納税額削減を目的とした、節税のための節税は、金銭感覚を狂わす。それは、不要な支出を正当化するからである。健全な金銭感覚を養うのには時間がかかるが、失うのは一瞬である。

節税の性質

節税の多くは、資金流出・資金拘束と引き換えに、次のような性質がある。

  • 税の繰り延べ
  • 現金の保存

税の繰り延べ

税の繰り延べは計画が必要である。おそらく理想は、半永久的に繰り延べることである。一時的な繰り延べは一時的な効果にすぎないが、半永久的ならば効果も半永久的である。徹底的にこれを活用しようとするなら、戦略的な実施が必要である。

現金の温存と保存の違い

倒産防止共済・小規模企業共済・確定拠出年金を積み立てることで “無税貯蓄” ができる、という意見がある。

ふつうの貯金・貯蓄の目的は、想定外の支出に備えるために現金を温存することである。温存と保存は違う。現金を保存する目的は、長期にわたり現金の状態を維持することである。ただしこの場合、その現金は手元にない。こうした違いを理解しておく必要がある。

“無税貯蓄” は現金の保存である。その善し悪しは、その人や会社が持つビジネスプラン・投資プランに依る。

将来キャッシュフローの創出

将来キャッシュフローの創出は、節税よりも優先される。節税の結果、新たな将来キャッシュフローを創出するための充分な資金を確保できなくなるのは、本末転倒である。

新たな将来キャッシュフローの創出とは、新規事業を興す(収入源を増やす)、既存事業を拡大する(既存の収入源を強化する)、株式投資をする、といった活動のことである。

判断基準

  • 節税以外の正当な理由がない場合は、これを採らない。
  • 資金繰りを悪化さす場合は、これを採らない。
  • 適切な額の手元資金を確保していなければ、これを採らない。
  • 将来キャッシュフローの創出は、節税よりも優先される。